KS LAB

東京工業大学 物質理工学院 応用化学系Tokyo Institute of Technology

研究背景

精密重合とは、、、

 高分子の合成反応である重合反応の中でも、開始と生長反応からなり、連鎖移動、停止などの副反応のない精密な連鎖重合を「リビング重合」と呼び、生成する高分子の一次構造と分子量を制御するのに非常に有効な手段です。このような精密重合は、従来にはない特殊な構造の高分子を自在に設計できるだけではなく、熱可塑性ゴムとして使用されるトリブロックポリマーや樹脂添加剤・シーリング剤などに使用される両末端官能基化ポリマーなど機能性高分子材料の製造法として工業的にも重要な手法となっています。
 当研究室では、このような精密重合反応の原理原則に立脚した上で、新しい有機反応のアプローチなどにより、さらに新しい重合反応を世界に先駆けて開発することを目標に研究を行っていきます。



研究内容

※2018年度までの成果は名古屋大学上垣外研究室との共同研究になります。

新しい精密重合反応系の開発

 新しいの重合反応の開発を行います。とくに、従来の活性種(ラジカル、カチオン、アニオンなど)や反応機構(連鎖重合、逐次重合など)の枠組みを超え、様々な重合手法を組み合わせた未知なる反応の開発に取り組みます。これにより、これまで作ることができなかった全く新しい高分子材料を創り出せると期待できます。



Selected Publications
1. K. Satoh*, Y. Mori, M. Kamigaito, J. Polym. Sci., Part A, Polym. Chem., 57, 465-473 (2019).
2. K. Satoh*, H. Hashimoto, S. Kumagai, H. Aoshima, M. Uchiyama, R. Ishibashi, Y. Fujiki, M. Kamigaito, Polym. Chem, 8, 5002-5011 (2017).
3. T. Soejima, K. Satoh*, M. Kamigaito*, J. Am. Chem. Soc., 138, 944-954 (2016).
4. M. Uchiyama, K. Satoh*, M. Kamigaito*, Angew. Chem. Int. Ed., 54, 1924-1928 (2015).
5. H. Aoshima, M. Uchiyama, K. Satoh*, M. Kamigaito*, Angew. Chem. Int. Ed., 53, 10932-10936 (2014).
6. K. Satoh, J. E. Poelma, L. M. Campos, B. Stahl, C. J. Hawker*, Polym. Chem., 3, 1890-1898 (2012).
7. M. Mizutani, K. Satoh, and M. Kamigaito*, J. Am. Chem. Soc, 132, 7498-7507 (2010).
8. K. Satoh, S. Ozawa, M. Mizutani, K. Nagai, M. Kamigaito*, Nat. Commun., 1: 6 (2010).
Selected Cover Arts



植物由来モノマーの精密重合

 持続可能な社会形成という観点から、再生可能な植物由来資源の有効利用が重要視されてきています。我々は、植物由来のさまざまな物質を化学反応により重合可能なモノマーへと変換するとともに、従来の精密重合の知見を活かして新しい機能性高分子環境材料の創出を目指します。



Selected Publications
1. H. Takeshima, K. Satoh*, M. Kamigaito*, Polym. Chem., 10, 1192-1201 (2019).
2. H. Takeshima, K. Satoh*, M. Kamigaito*, ACS Sustainable Chem. Eng., 6, 13681-13686 (2018).
3. M. Ojika, K. Satoh*, M. Kamigaito*, Angew. Chem. Int. Ed., 56, 1789-1793 (2017).
4. H. Miyaji, K. Satoh*, M. Kamigaito*, Angew. Chem. Int. Ed., 55, 1372-1376 (2016)..
5. K. Satoh*, Polym. J., 47, 527-536 (2015).
6. K. Satoh, M. Matsuda, K. Nagai, M. Kamigaito*, J. Am. Chem. Soc, 132, 10003-10005 (2010).
7. K. Satoh, S. Saitoh, M. Kamigaito*, J. Am. Chem. Soc., 129, 9586-9587 (2007).
8. K. Satoh, H. Sugiyama, M. Kamigaito*, Green Chem., 8, 878-882 (2006).
Selected Cover Arts



高分子鎖切断の精密設計

 多様な使用環境において、高分子素材の利用中もしくは利用後の分解が深刻な問題を引き起こす例が報告されてきています。
 本研究室では、精密重合で培った知見をもとに、化学分解の制御が可能なユニットの設計・高分子鎖へ導入し、誘発分解による精密分解可能な新規高分子材料の設計指針を探索しています。また、分解物が安全な非可食性バイオベース材料への展開や様々な利用環境下における分子レベルでの結合の切断が生じる反応機構の時系列評価を行います。